2.油圧パワーステアリング(HPS)
(1)油圧パワーステアリングの性能
一般的に油圧パワーステアリング(HPS)は、良好なオンセンタ−フィールだと言われていますが、
どの程度なのかを理解できるのが下図です。
下図は、HPSの車両が直進しているときのステアリングホイール角(赤線)とピニオン角(青線)を示します。
ステアリングホイールとピニオンの位置関係は下の油圧パワーステアリング基本構造図を参照して頂きたい
のですが、この図から次のことが分かります。
@ステアリングホイール角の変化は±0.5deg以下、ピニオン角の変化は±0.3deg以下であり、
いずれの変化も非常に小さな値です。
一般的なステアリングホイールの外径が直径350mm程度ですから、
ステアリングホイール外周部が動く幅としては約3mm p-pです。
Aステアリングホイールとピニオンの間には、捩れやすいトーションバーがあるにも関わらず、
ピニオン角はステアリングホイール角の小さな変化にも良く追従しています。
上記の@、Aから、油圧パワーステアリングの車両は、
セルフアライニングトルク(SAT)の働きにより、車両が強く直進しようとしていること、
また、油圧パワーステアリング内部の抵抗が小さく、操舵機構が動きやすくなっていること、
などが分かります。
(2)油圧パワーステアリングのオンセンタ−フィールが良好な理由
この理由は、 ステアリングホイールからの操舵力が無く、トーションバーが捩れていないときは、
油圧シリンダ内のピストンの両側のR室とL室はコントロールバルブ内で油路が通じているため、
ピストンの動きが遅ければ移動する油の抵抗も小さいので、油圧機構は操舵機構の動きにとっては
大きな抵抗にはなりません。 あたかも油圧アシスト機構を持たない操舵機構と同じ状態になっている
からです。
(注)
このことは、ジャッキやリフトで油圧パワーステアリング車の両前輪を地面から離す状態にすると、
エンジンが動いている状態でも、電動パワーステアリング車よりも小さい力で、前輪を手で動かす
ことができることにより知ることができます。
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左図は、油圧パワーステアリング装置
(HPS)の基本構造図です。
操舵力が無く、トーションバーが捩れて
いないときは、 ピストンは左右どちらの
方向にも 自由に動けるので、
小さなセルフアライニングトルク
(SAT)でも操舵機構が直進方向に
動きます。
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下図はコントロールバルブの切換機能の説明図です。
トーションバーが捻れると、ピニオン側に取り付けられたスリーブとステアリングホイール側に取り付けられた
ローターの回転角度位置の関係が変化し、操舵アシストの状態を切り換えます。
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ステアリングホイールを時計方向
CWに操舵すると、
油圧ポンプからの油圧はR室に
加わり、車両が右旋回する方向に
操舵アシストします。
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ステアリングホイールをどちら方向
にも操舵しないなど、
トーションバーの捩れが小さくなると
R室とL室は通じた状態になり、
どちらにも油圧は等しく加わるため、
ピストンは油圧の高低に関わらず
左右どちらの方向にも自由に動ける
ようになります。
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ステアリングホイールを反時計方向
CCWに操舵すると、
油圧ポンプからの油圧がL室に
加わり、車両が左旋回する方向に
操舵アシストします。
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