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NM-1
Neutral Maker for Electric Power
Steering
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仕組
1.はじめに
2.構造
3.制御
4.動作
5.ご参考
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1.はじめに
まず、「既存の電動パワーステアリングを良好なオンセンタ−フィール(直進走行感)にします」
と言っても、NM−1が、積極的に、そのように機能する訳ではありません。
元々、正しい状態の全ての車両は、摩擦抵抗が大きな電動パワーステアリングが取り付けられて
いなければ、良好なオンセンタ−フィール(直進走行感)になるように作られています。
そこで、NM−1は、直進時など、電動パワーステアリングが操舵アシストをしないときに
電動パワーステアリングの操舵アシスト機構が操舵機構の動きの抵抗にならないようにして、
あたかも電動パワーステアリングが取り付けられていない状態(いわゆる重ステの状態)にします。
下図(左)は、電動パワーステアリング装置の、操舵機構の基本構成と、そのコラム部に取り付けられた、
ウォーム減速機とアシストモーターを使った操舵アシスト機構とトルク記号の位置を説明した図です。
また、下図(右)は、パワーステアリング装置における操舵トルクTSと操舵アシストトルクTAの
一般的な関係を示した図です。
NM−1は、下図(右)で、操舵トルクTSが小さく、操舵アシストトルクTAがゼロとなる、範囲Fのときに
操舵アシスト機構が操舵機構の抵抗にならないように働きます。
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2.構造
上図は、操舵アシスト機構にNM−1を取り付けた状態の断面図です。
・ NM−1は、操舵アシスト機構のウォーム減速機とアシストモーターの間に挟むように取り付けます。
取付方法については、「取付」のページをご覧ください。
・ ウォームに軸方向のプリロードを加える押さえネジは、ウォームが軸方向に約1mmの
ストロークで移動できるように、再調整されています。
・ アシストモーター軸の回転がウォームに伝わるように、カップリング(A)、(B)で接続
されています。
カップリング(A)とカップリング(B)は、回転方向には遊びはありませんが、
軸方向には多少移動できるようになっていて、バネで互いに離れるようになっています。
そのため、カップリング(A)はアシストモーター側に常に押しつけられて軸方向に動きませんが、
カップリング(B)はバネでウォームに押しつけられているため、常にウォームと一体となって
軸方向に移動します。
・ ウォームの軸方向の位置は、カップリング(B)の外周に取り付けられたセンサーリングの
軸方向の位置変化になって、センサー(フォトインタラプタ)で検出されます。
・ 制御モーターは、シンクロベルトを介してカップリング(A)、(B)を回転させることによって、
アシストモーター軸とウォームとを回転させます。
シンクロベルトによる減速比は 1:3 です。
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3.制御
上図は、ウォームの軸方向位置の制御を説明するために、要部のみを表示したものです。
まず、上図のように、ウォームの軸方向位置が「隙間L≒ 隙間R」の状態から、ウォームを回転させずに、
ステアリング軸でウォームホイールを回すと、先にウォームが軸方向に動いて、
ステアリング軸の回転角度は非常に小さいですが、隙間Lまたは隙間Rが0(ゼロ)になり、
さらに回すと、次にウォームホイールがウォームとアシストモーター軸を回すようになります。
この時のステアリング軸を回すトルクは、 隙間Lまたは隙間Rが0(ゼロ)になるまでは小さく、
さらにウォームとアシストモーター軸を回すようになると、ウォームとウォームホイールが噛み合う部分に
プリロード(予圧)Pが加えられているので、強い摩擦力が働くことと、ウォームがアシストモーターを
回転させるときのアシストモーターを回す力はウォーム減速機の減速比で倍力されるので、
非常に大きなものになります。
また、上図のように、ウォームの軸方向位置が「隙間L≒ 隙間R」の状態から、ウォームホイールを
止めた状態で、ウォームを時計方向CWまたは反時計方向CCWに回すと、ウォームは、螺旋状の歯部が
ウォームホイールの歯部と噛み合っているので、螺旋に沿ってR方向またはL方向に移動します。
そこで、NM−1は、上述のように、ウォームホイールとウォームのどちらを回しても、ウォームの
軸方向位置が変化することと、ウォームが軸方向に動くときの抵抗が小さいことを利用して、
ウォームの軸方向位置をセンサーで検出し、その軸方向位置に応じて、コントローラーが制御モーターを
使ってウォームを回転させることによって、
ステアリング軸の回転角度位置が変化しても、常に、ウォームの軸方向位置が「隙間L≒ 隙間R」
になるように制御します。
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4.動作
上述「3.制御」のようにNM−1を制御することによって、電動パワーステアリングは次のように動作します。
まず、「1.はじめに」の右図で操舵アシストをしない範囲Fのときには、アシストモーターに電流は流れて
いませんから、アシストモーターによるウォームの回転を止めようとするトルクは、制御モーターがウォームを
回そうとするトルクより小さいので、ウォームの軸方向位置は、制御モータによる制御によって、
常に「隙間L≒ 隙間R」の状態にされるので、ステアリング軸の回転方向や回転角度の大きさに関わらず、
ステアリングホイールによる操舵、または、前輪タイヤからのセルフアライニングトルクの、
いずれによっても、操舵アシスト機構から制限されずに、操舵機構は自由に動ける状態になります。
また、 操舵アシストをするときには、アシストモーターの電流を徐々に増加させると、
アシストモーターがウォームを回そうとするトルクは、制御モータ−がウォームを回そうとするトルク
より大きくなるので、制御モーターによるウォームの軸方向位置の制御は不能になり、
隙間Lまたは隙間Rが0(ゼロ)になると共に、従来通り、操舵力が小さい快適な操舵が可能になります。
尚、上記のウォームの軸方向の遊びを使った動力の断続は、摩擦クラッチのように、断続部に回転速度の
差が無いので、滑らかに切り替わります。
但し、操舵アシストするときの操舵アシストトルクTAは、アシストモーターが出力している回転方向と
逆の方向に制御モータのトルクが常に作用しているため、その分だけ若干小さくなります。
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5.ご参考
NM−1は、既存の操舵アシスト機構に後から取り付けをするために、上図のように構造が複雑になって
いますが、 「 特許第5704491号 電動パワーステアリング装置」のように、ウォームの軸方向位置の制御を
アシストモーターに兼用させれば、下図の特許実施例)のように非常に簡単な構造となり、
従来のものに若干のコストアップで同じ機能が実現できるようになります。
また、NM−1のように、制御モーターによる操舵アシストトルクの損失もありません。

尚、弊社の「特許第5704491号 電動パワーステアリング装置」は、これまでに類似ものが全く無い、基本特許であるため、
弊社特許の特許請求の範囲は、特許実施例に示した具体的なものに限定されず、概念的な広いものであります。
そのため、減速機、不感帯(機械的遊び)、センサーなどの、方式や配置の変更、さらに新規構造であっても、
派生特許は取得できますが、多少の変更では弊社特許を回避することは困難であることをご承知ください。
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