5.あとがき
正直申しまして、色センサーの設計は本当に難しいと思いました。
この色センサーで色紙とか色見本のような彩度の高い色を測定する
場合は、可成りの精度で判断できます。
しかし、現実にはいろいろな問題があります。
例えば、次のような場合です。
・色の数は無限にありますが、それを10色で表現するのですから、
中間の色では判断に迷います。
・表面に光沢があると、照明している光源の照り返しの中を測定して
しまうことになりますので、間違えてしまいます。
・布、プラスチック、人の体など半透明なものは、照明した光が
内部に入ってしまい反射してきませんので、濃いめの判断となります。
・反射光を利用しているため、透明なものは測定できません。
・etc.....
盲人の方が色を一番知りたいのは、衣服の色です。
特に、冠婚葬祭の時に失礼がないようにとか、女性はお洒落をしたいとか、
男性でも靴下の左右の色だけでも同じにしたいとかの場合です。
冠婚葬祭の黒い服は一見判断が簡単そうですが、
これらの服の多くがシルクなので表面に光沢があります。
また、黒い靴なども磨いてあると可成りの光沢があります。
「緑の黒髪」などという言葉がありますが、黒も表面に光沢があると
一部が緑色などに見える場合があります。
光量が少なくなった場合に、全てを黒と判断させるのは簡単ですが、
このセンサーは、濃紺や焦げ茶を黒と言わないように、光量が可成り少なく
なっても 簡単に黒と言わないように設定してあります。
そのため、ちょっとしたことで、黒を「濃い、緑」、「濃い、青」、
「濃い、茶」などに間違えることが良くあります。
これは人の目でも薄暗がりでは判断が難しいことと同じですが、
人の目の場合は感度が高いのと全体を見て判断するので間違え難いです。
しかし、センサーはどのような状況か分かりせんから、少しの測定値の
誤差でも機械的に判断をしてしまうので、このようになってしまいます。
検出部の照明方法などを工夫すれば改善されるかも知れませんが、
本機では 対策として、可成り濃くて黒に近い色になると、
まず、色の前に「たぶん」と言い、続けて「濃い色の名」、最後に「黒」を
言わせて、黒かも知れないことを知らせます。
一応このような対策を講じておりますが、黒が一番簡単と考える人には
「黒も正しく測れないのか」と思われてしまいます。
正確に判断できるように、更に技術的な改良をすることも重要ですが、
それ以外にも重要なことがあります。
例えば、中途失明者の方は色の記憶がありますが、一度も色を見たことが
無い方がおられます。
これらの方には、言葉から色をイメージできませんので、
例えば、「紺」と「濃い、青」は全く違うものと思われてしまいます。
色名辞書を作るとか、何か対策を考えなければなりません。
上記のように色々と難しい問題も有り、このセンサーもまだまだ完全なもの
ではありませんが、現在のところ、このような盲人用の色センサーは、
他には販売されておりません。
しかし、このセンサーでも使い方によっては使って便利だと感じてくださる
方もおられるのではないかと思い、製品として販売を始めました。
終わりに、
このホームページが、更に優れた色センサーを作られようとする方の参考に
なれば幸いです。